You Tubeを使い出すようになってから邦楽をよく聞くようになった。
最近では小沢健二にPizzicato Fiveあたり、懐かしの90年代音楽。
小沢健二に至ってはBook Offでファーストアルバムまで買ってしまった。決め手はなんといっても軽快なリズムと底抜けに楽観的な歌詞。このアルバムに入っている曲のほとんど全てが恋愛初期の気分の高まりだけを歌っている。この集中力はちょっとすごい。と、よく分からない理由で購入決定。これがまた春の陽気に合ってとても楽しい。
ここからリサーチが始まって、今彼は全くマスコミに出ていないこと、童話を発表していること、去年アルバムをだしたことなどが分かった。アルバムのタイトルは「毎日の環境学」。なんとも惹かれるタイトルだけど$20出して冒険する気は起きないなあ。
と、次にたどり着いたのが彼の叔父さん、言わずと知れた小澤征爾と、彼のお父さんである小澤俊夫。小澤俊夫氏はドイツ文学研究者で現在は筑波大学の名誉教授らしい。とりあえずBook Offに行ったら小澤征爾の本が手に入ったのでこちらから攻めることにした。面白かったのは小澤氏と数学者の広中平祐氏との対談集である「やわらかな心をもつ」という本。広中氏は70年に数学のノーベル賞といわれるフィールズ賞を受賞した人で、小澤氏とはヨーロッパで会って以来数十年にわたる親友同士らしい。専門的な分野での共通点についての話を期待していたけれど、会話は終始カジュアルなもので、予想外に面白かったのは教育についての話だった。二人に共通していた意見は「子供には遊ぶ時間が必要だ」ということと「教育は学校の中だけの問題じゃない」ということ。これは遊びを通じて想像力や感性を養う、ということと、家族やコミュニティの人間から生き方を学ぶということなのだと思う。この対談が行われたのは76年だから彼らの意見をそのまま生かすのは難しい社会になってきているかもしれないけど。。。もう一つ私が大いに同意したのが、頭の中に、物を考える為の「余白」を作るべき、という広中氏の発言。以下は本から抜粋。
「だから、ぼくに言わせればね、うーんと覚えてね、うーんと忘れる。その差以上にその和が大切だと思うんだ。特に若いころにはね。素晴らしいと感じたことは忘れろって言ったって忘れられない。つまんないことは忘れるなと言ってもいつの間にか忘れる。その過程で、その人の判断力とか創造力が磨かれる。覚えて、忘れて、思い出す時、人間は必ず考える。考えることがいちばん大切なわけだ。だけど、覚えることも忘れることもなければ、考えることもない。あのね、知識というものもね、場合によっては非常に危険なものなのよ。知りすぎてるためにね、うまく行かないこともあるわけよ。たとえばね、ある他人の理論というものを、非常によく知っているとね、ついそっちの方にこう惹かれちゃってさ、で、物事も新しい新鮮な立場から見る態度が妨げられるわけよ。」
遊んで学んで忘れて考える。こういうことができるおおらかな環境を子供達に提供したいものだと思う。
対談はすらすら読めるようなものだったけど、分からなかったことが一つある。
広中氏の「数学は音楽みたいに美しい」という発言。音楽だったら耳で美しさを感じ、アートだったら主に目で美しさを感じる。数学の美しさはどこでどういうふうに感じるんだろう。高校時代数学の成績が10段階中1だった私には、答えは風の中。。。